小泉八雲 日本人の微笑
『明治日本の面影』 講談社学術文庫 に収録
「 いまこうした事を書いている時、私の念頭に浮ぶのは京都の
一夜の思い出である。町の名は忘れたが、たいへん人ごみ
のする街灯の点った町を心をはずませて私は歩いていたが、
小さなお寺の門前にあるお地蔵様を見に道を折れた。それは
見習僧を意味する『小僧』の像で美しい少年であった。
その微笑は神々しい写実の一端を示していた。私がじっと
眺めていると、十歳くらいの幼い子が私の脇に駆けよってきて、
お地蔵様の前で小さな両掌をあわせると、頭を垂れ、ちょっとの
間黙ってお祈りをした。その子は遊び仲間からたったいま別れ
てきたばかりらしい。はしゃいだ遊びの楽しさがその童顔に
まだ光っていた。そして、その子の無心の微笑は石のお地蔵様
の微笑に不思議なくらい似ていた。私は一瞬その子とお地蔵様
と双子であるかと思った。 」
ラフカディオ・ハーンが、日本国籍を取得してからの名前が
「小泉八雲」である。
古き日本を愛し、彼が収集した怪談は、現在でも知られているも
のも多い。
島根県の松江に一時期住み、松江を愛した。
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